鉄のフライパンで調理すると鉄分が補給できますが、実際にどれくらい鉄分を補給できるのか知りたいですよね。
とくに女性は、普段から鉄分が不足しがちで、鉄欠乏性貧血になりやすい傾向にあります。
一般的に鉄分は、食べ物やサプリメントなどから補給できることはよくご存じでしょう。
たとえば、食べ物ではレバーやほうれん草、小松菜、大豆製品(豆腐、豆乳、納豆)、カツオ、マグロなどは、鉄分を多く含んでいます。
しかし、これらの食べ物を日頃から意識してメニューに取り入れるのは、家事や育児、仕事で忙しい女性にとって負担になりかねません。
また、手っ取り早く足りない鉄分を、サプリメントなどで補給するにもコストがかかります。
日頃から鉄のフライパンで食材を調理するだけで、からだに吸収されやすい鉄分を自然に簡単に補給できれば、手間とコストがかからず理想的ですよね。
そこで、この記事では鉄フライパンでの調理で鉄分を補給できるのか、またどの程度補給できるのかを詳しく説明します。
さらに、鉄鍋(なべ)と鉄フライパンでの鉄分補給量の違いについても詳しく解説します。
【そもそも】鉄フライパンで鉄分は補給できるのか?
話を始める前にそもそも論として、鉄のフライパンでほんとうに鉄分が補給できるのか、確認しておきましょう。
先に結論から言うと、鉄のフライパンで鉄分は補給できます。
その根拠として下記の文献で、鉄のフライパンや鉄の鍋(なべ)を使用した調理で、鉄分が溶け出すことが確認されています。
上記の文献では、鉄のフライパンや鍋で調理すると、からだへの吸収率が高く利用されやすいタイプの鉄分が料理へ溶け出すことがわかります。
結果として摂取量が増加するため、鉄欠乏性貧血の予防に有効であることが示唆されています。
ここで、とくに強調しておきたいのが、鉄のフライパンや鉄の鍋(なべ)から補給できる鉄分は、からだへの吸収率や利用率が高い「ヘム鉄」という点です。
鉄分は、からだへの吸収率や利用率が高い「ヘム鉄」と、どちらも低い「非ヘム鉄」の2つに分類されます。
からだへの吸収率や利用率が高い「ヘム鉄」は主に、レバーやカツオ、マグロなどの動物性の食物に多く含まれています。
これに対して、からだへの吸収率や利用率が低い「非ヘム鉄」は、ほうれん草や小松菜、大豆製品(豆腐、豆乳、納豆など)などの植物性の食物に多く含まれています。
鉄のフライパン・鍋で調理すれば、鉄分を多く含む食材選びに迷ったり時間をとられたりすることなく、手軽で簡単にからだへの吸収率や利用率が高い「ヘム鉄」を補給できます。
鉄フライパンの鉄分補給量はどれくらいか
鉄のフライパンで鉄分が補給できることはわかりましたが、実際にどの程度、摂取できるのか知りたいところです。
というのも、鉄のフライパンによる鉄分の補給量で、日頃の鉄分不足をおぎなえるのか、また鉄分の過剰摂取にならない程度なのかなど気になりますよね。
たとえば、調理中に鉄フライパンからの料理に溶け出す鉄分の量を下の表にまとめたので参考にしてください。
メニュー (1人分) | 料理への溶出量 | 調理時間 | 鉄分の溶出を促進する要素 | 鉄分の溶出を阻害する要素 |
---|---|---|---|---|
野菜炒め | 約0.15mg | 5分 | – | 油 |
酢豚 | 約0.35mg | 30分 | 食酢 | 油 |
上表の各メニューの「1人分の料理への溶出量」を見ても、この量が妥当なのか判断しにくいと思います。
そのため、厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の内容と比較しながら詳しく解説します。
下表のように「日本人の食事摂取基準(2020年版)」内で、1日に摂取がすすめられる鉄分の推奨量や耐容上限量が策定されています。
対象 | 鉄分摂取の推奨量 (1日当あたり) | 平成 28 年国民健康・栄養調査における 日本人成人(18 歳以上)の 鉄平均摂取量(1日当あたり) | 耐容上限量 (1日当あたり) |
---|---|---|---|
成人女性 (18歳以上) | 月経なし:6.0~6.5mg 月経あり:10.5~11.0mg | 7.3±2.7mg | 40mg |
成人男性 (18歳以上) | 7.0~7.5mg | 8.1±2.9mg | 50mg |
上表から、月経がある成人女性の場合では、1日に10.5mg~11.0mgの鉄分の摂取が推奨されているのに対して、実際は7.3mgしか摂取されておらず不足気味です。
たとえば、鉄のフライパンで調理すると、1食分の野菜炒めで月経がある成人女性について、1日あたりの鉄分推奨量の約1.4%、酢豚では3.2~3.3%を追加で補給できます。
また、調理中に鉄フライパンからの料理に溶け出す鉄分の量は、1日の耐容上限量をはるかに下回っているので問題はありません。
鉄分の溶け出す量は料理に添加される調味料に影響され、酢、ケチャップ、食塩の順に多くなり、とくに酸性にかたよっている酢では溶出量が顕著に増加する傾向があります。
また、調理時間にも影響され、料理時間が長いほど料理に溶け出す鉄分の量が増加します。
参考:調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化
このことから、調理後、長時間にわたって鉄のフライパン内に料理を入れたままにすると、過剰に鉄分がとけ出すことが考えられるので注意が必要です。
一方、野菜炒めや酢豚のように油を使う料理では、油でフライパンの表面がコーティングされ、鉄分が溶け出しにくくなります。
結論として、鉄のフライパンで調理するとメニューにもよりますが月経のある成人女性について、1食あたり1日の推奨量の約1.4~3.3%の鉄分を追加で補給できます。
鉄鍋(なべ)と鉄フライパンで鉄分補給量は違う?
鉄のフライパンでは、メニューにもよりますが1食あたり、月経がある成人女性について1日の推奨量、約1.4~3.3%の鉄分を追加で補給できることがわかりましたが、鉄鍋(なべ)での鉄分補給量はどれくらいなのか気になりますよね。
たとえば、ビーフシチューを調理中に鉄の鍋から溶け出す鉄分の量を、下の表にまとめたので参考にしてください。
メニュー | 1人分の料理への溶出量 | 調理時間 | 鉄分の溶出を 促進する要素 | 鉄分の溶出を 阻害する要素 |
---|---|---|---|---|
ビーフシチュー | 約1mg | 120分 | – | – |
鉄の鍋でビーフシチューを調理すると1食あたり、月経がある成人女性について1日の推奨量の約9~9.5%の鉄分を補給できます。
鉄のフライパンで調理した野菜炒めより約6.7倍、酢豚より約2.9倍も鉄分が溶け出す量が多くなっています。
また、ビーフシチューへ溶け出す鉄分約1mgは、1日の耐容上限量をはるかに下回っているので問題ありません。
鉄鍋は鉄フライパンより調理時間が長くなる傾向があるので、おのずと調理中に溶け出す鉄分の量も多くなります。
ちなみに、鉄鍋(鉄釜)がステンレス鍋(ステンレス釜)より鉄分が多く溶け出す有名な実例を1つ挙げます。
下の表のように、加工過程で鉄鍋(鉄釜)とステンレス鍋(ステンレス釜)でゆでられた「ひじき」で、鉄分の含有量に約9.4倍のひらきがあることがわかっています。
ひじきのゆで加工方法 | 鉄分の含有量 (100gあたり) |
---|---|
乾燥ひじき(鉄釜) | 58mg |
乾燥ひじき(ステンレス釜) | 6.2mg |
上表は釜でゆで上げたあとに乾燥したひじきなので水分が少なく、100gあたりの鉄分含有量がとても多く思えます。
しかし実際には、水でもどして使うので通常の食事で食べる量では、耐容上限量を超えることはないでしょう。
結論として、鉄鍋は鉄フライパンやステンレス鍋で調理したときより多くの鉄分「ヘム鉄」が溶け出すので、効率良く鉄分を補給できます。
まとめ
鉄のフライパンを使用した調理の際に、追加で補給できる鉄分の量は料理にもよりますが、月経のある成人女性について、1食あたり1日の推奨量の約1.4~3.3%の鉄分を追加で補給できます。
また、鉄の鍋では月経がある成人女性について、1食あたり1日の推奨量の約9~9.5%の鉄分を補給できます。
鉄鍋のほうが鉄フライパンより調理時間が長くなる傾向があるので、調理中に溶け出す鉄分の量が多くなります。
月経がある成人女性については鉄分が不足しがちなので、鉄分の多い食材をメニューに取り入れたり、サプリメントで補給したりすることもできます。
しかし、鉄分を意識した献立を毎回考えるのは手間がかかり、かといってサプリメントはコストがかかります。
鉄フライパンや鉄鍋を調理で使うだけで、吸収率やからだでの利用率が高い「ヘム鉄」が手軽に補給できます。
日頃から家事や育児、仕事で忙しい女性はとくに、鉄フライパン・鍋を使用してタイパとコスパよく鉄分を補給してみてはいかがでしょうか。
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