料理が好きな人からプロのシェフまで、幅広く愛用されている「鉄フライパン」。
そんな鉄フライパンにはいくつか製造方法があり、大きく分けると「プレス(鍛造)」と「鋳造」の2種類になります。
鋳造とは溶かした鉄を型に流し込む製造方法のことで、鋳造によってできたものが「鋳物」です。
プレスと鋳物にはそれぞれ違った特性と利点があるので、互いの特徴を知ることで自分に合った鉄フライパンが選べるようになります。
この記事では、鉄フライパンの製造方法であるプレスと鋳物の違いを詳しく解説。
「プレスと鋳物は何が違う?」と疑問に思っている人は、ぜひご覧ください。
鉄フライパンを製造時のプレスや鋳物について
鉄フライパンは、プレスまたは鋳物の2つの製造方法から作られます。
まずは、それぞれの製造方法を紹介します。
プレス製造
プレス製造とは、鉄板をプレス機で型抜きして成形する製造方法です。
鉄フライパンのほとんどがプレス製造によってつくられており、「鋼板フライパン」とも呼ばれます。
プレス製造には、主に以下の3つの特徴があります。
- 製造コストが低い
- 薄くて軽い
- 熱が早く伝わる
最大の特徴は、製造コストが低い点です。プレス製造は大量生産が可能であるため安く作れて、消費者は手頃な価格で購入することができます。
安く鉄フライパンを手に入れたい人には、プレス製造が向いています。
また、金属板を薄く成形するため軽くて扱いやすいのも特徴です。手の力が弱い人にも、振りやすいプレス加工が適しています。
さらに、薄い仕上がりによりフライパンが温まりやすいのもポイント。予熱時間を短縮させて、時短料理につながります。
デメリットには、蓄熱性が低いため料理が冷めやすい点があげられます。また、耐久性においても鋳物製よりやや劣るため、長期間の使用による変形や損傷のリスクが高くなります。
鋳物製造
鋳物製造は、溶かした金属を型に流し込んで成形する製造方法で、「鉄鋳物フライパン(鋳鉄フライパン)」とも呼ばれます。
鋳物製造には、主に以下3つの特徴があります。
- 蓄熱性が高い
- 耐久性が高い
- オーブン調理が可能
鋳物のフライパンは厚みがあるため、蓄熱性が非常に高い性質があります。一度熱くなると長時間温度を保つことができるので、天ぷらのような温度管理が難しい揚げ物作りに最適です。
また、頑丈で耐久性に優れているのも特徴のひとつ。正しくお手入れすることで何年も使用できるため、鉄フライパンを育てるように使いたい人には鋳物製が向いています。
頑丈で蓄熱性の高い鋳物製は、オーブン調理も可能。オーブンで使いたい場合はハンドルが短いものや、ハンドルを着脱できる製品がおすすめです。
しかし、鋳物製造にもいくつか欠点があります。
特に、重くて扱いにくい点がデメリットとして挙げられます。そのため力の弱い女性や高齢者にはあまり向いていません。
ただ、近年では鋳物でも軽さに優れた鉄フライパンが登場しています。
鋳物の持ち味である蓄熱性を損なわず、軽くて振りやすい商品もあるので、腕の負担を抑えたい人は軽量タイプの鋳物フライパンを検討してみましょう。
具体的にプレスと鋳物ではどう違う?
ここまでプレスと鋳物を紹介しましたが、項目別で比較すると違いが出てきます。
どんな違いがあるのか、以下の表にまとめました。
項目 | プレス | 鋳物 |
---|---|---|
材料 | 平らな鉄の板 | 銑鉄 |
製造方法 | 高圧で成形 | 溶解したを型に流し込んで成形 |
厚み | 薄く、均一 | 厚みがある |
工程数 | 少ない | 多い |
耐久性 | やや低い | 高い |
価格 | 安い | やや高い |
それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
①材料の違い
まず、プレスと鋳物では材料が異なります。
プレス製造では、平らな鉄の板を使用して鉄フライパンが作られます。
一方、鋳物製造では炭素を多く含む「銑鉄」を使用します。
②製造方法の違い
製造方法にも大きな違いがあります。
プレスの場合、高圧をかけて金属板を成形します。
一方、鋳物は溶かした金属を型に流し込み成形します。
③厚みの違い
厚みで比べると、プレスと鋳物にも違いが見られます。
プレスは高圧で成形するため、薄くて凹凸のない均一な仕上がりになります。
対して、鋳物は厚みがあるのが特徴です。
厚みがあるぶん重くはなりますが、鋳物の特徴である表面の凸凹のおかげで油馴染みが良くなり、食材との接地面積も減るため焦げ付きにくくなるメリットがあります。
④工程数の違い
工程数に関しても違いがあります。
プレス製造は鉄板を型抜きして成形するため、比較的工程数が少なく完成します。
反対に、鋳物は完成するまで多くの工程が必要です。原料の鉄を溶かし、鋳型(いがた)とよばれる型に流し込んで成形しますが、温度管理が難しく職人の長年培った経験がないと上手くできません。
⑤耐久性の違い
耐久性にも、プレスと鋳物には違いがあります。
プレスで作られた鉄フライパンは薄く仕上がるため、耐久性がやや低くなります。
一方、鋳物は厚みがあり長期使用も可能です。正しくメンテナンスすることで半永久的に使えます。
ただ、どちらも鉄製ということもあり、数十年単位で長く使えます。
⑥価格の違い
価格で比べても、違いがはっきり出ます。
プレス加工は工程数が少なく大量生産しやすいので、比較的安く購入できるのがメリットです。
一方、鋳物製は一つひとつ職人が手作業で行い、工程も多いことから大量生産が難しく、価格が高くなる傾向にあります。
鉄フライパン製造のプレスと鋳物は厚さが大きく異なる
この記事では、鉄フライパンの製造方法であるプレスと鋳物の違いを解説しました。
プレスと鋳物の製造には、大きく分けて以下6つの違いがあります。
- 材料
- 製造方法
- 厚み
- 工程数
- 耐久性
- 価格
特に違いが大きいのは、厚みです。
プレスは金属板を型抜きするため薄く仕上がり、鋳物は製造時に厚みを出さないと割れる恐れがあるため、厚みがあるのが特徴です。
そのため、「軽くて扱いやすく、手頃な価格で欲しい」という方にはプレス製造、
「多少重くても大丈夫、育てるように長く使いたい」という方には鋳物製造の鉄フライパンを選ぶといいでしょう。
当メディアを運営する私たち、岩手製鉄株式会社が販売しているブランド「岩鉄鉄器」のダクタイルシリーズでは、一般的な鋳物ではねずみ鋳鉄と呼ばれる鉄を使用する中、薄くても丈夫な”ダクタイル”を採用しています。
炭素が含まれており蓄熱性もプレス製造に比べて優れ、食材に素早く火が通るダクタイルを独自技術で薄く・軽くしたダクタイルシリーズのフライパンでは野菜炒めもシャキッと食感がいい仕上がりになります。
参考:岩手製鉄の技術
今回は鉄フライパン製造の「プレス」と「鋳物」の違いとは何かを解説させていただきました。
料理のスタイルや使用目的に応じて、適切な製造方法の鉄フライパンを選びましょう!