【知っていて損はない!?】ねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄の違いとは

金属を溶かして成形する鋳物製品は、身近なものから産業までさまざまな場所で使われています。

ただ、一口に鋳物といっても種類はいくつかあり、特性や適した用途が異なります。

その中でも特に違いが分かりにくいのが、ねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄です。

そこで今回は、ねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄の違いを解説します。

鋳物製品を調べていて「ねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄って何が違う?」と気になった人は、参考にしてみてくださいね。

目次

そもそも鋳鉄とは

違いを紹介する前に、どちらの名前にも付いている「鋳鉄」について紹介します。

鋳鉄とは鋳物製品の一種で、鉄を中心にして作られた鋳物のことです。

よく比較される鋳物製と鉄製商品の違いは、鋳物製と鉄製商品の違いってなに?製鉄企業が解説しますで詳しく解説しているのでご参照ください。

そして、今回紹介するねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄も同じ鋳物製品で、鋳鉄に分類されるものです。

それぞれ見ていきましょう。

ねずみ鋳鉄とは

ねずみ鋳鉄とは、黒鉛が片状に析出している鋳鉄の1種です。

析出とは、液状の物質から固体成分が分離して出現する現象を指します。

ねずみ鋳鉄はその名の通り、破面がねずみのように灰色の見た目をしているのが特徴です。ゆっくりと鋳鉄を溶かすことで灰色になります。

急冷すると破面がより明るい灰色になり、この場合は「白鋳鉄(はくちゅうてつ)」という物質になります。

振動吸収性・加工性・耐摩耗性・耐腐食性・熱衝撃に優れており、以下のようなものに使われます。

  • エンジンブロック
  • シリンダーブロック
  • マンホールの蓋
  • 防火戸
  • 機械部品

一方で、ほかの鋳鉄と比較すると強度が弱く、脆いといったデメリットもあります。

ダクタイル鋳鉄とは

ダクタイル鋳鉄とは、黒鉛を球状にすることで強度や延性を強化させた鋳鉄の1種です。

ねずみ鋳鉄のデメリットであった強度や靭性の弱さを打ち消し、衝撃や荷重に対しても壊れにくい特性があります。

また耐摩耗性が高く、機械部品や車両部品といった摩擦が多い環境でも長く使えます。

たとえば、以下のような用途で使用されます。

  • クランクシャフト
  • 上下水道管
  • ポンプハウジング
  • 鉄道車輪
  • ショベル

自動車産業やインフラ、機械産業などさまざまな分野で広く利用されています。

ねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄の違いを解説

上記でも少し紹介しましたが、それぞれの違いを詳しく解説します。

以下は、ねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄の特性を比較した表です。

項目ねずみ鋳鉄ダクタイル鋳鉄
黒鉛の形状片状球状
引張強度低い高い
圧縮強度高い高い
延性低い高い
耐摩耗性高い非常に高い
加工性非常に高い高い
耐振動性非常に高い高い
コスト低いやや高い
主な用途エンジンブロック、マンホールの蓋、切削工具など水道管、車両部品、フライパン、鉄道車輪など

一見同じように見える物質ですが、項目別に比較すると違いがあることが分かります。

項目別に見ていきましょう。

①黒鉛の形状

まず大きな違いは、組織に含まれる黒鉛(グラファイト)の形状です。

ねずみ鋳鉄は片状の黒鉛に対し、ダクタイル鋳鉄は球状の黒鉛が含まれています。

球状にすることで、ねずみ鋳鉄のデメリットである延性や靭性の弱さを打ち消しています。

ダクタイルは英語で「ductile」であり、「延性のある/しなやかな」という意味があります。

②引張強度・圧縮強度

引張強度とは、材料が破壊されるまで引っ張ったときの力のことです。圧縮強度は、物質が破壊されるまで耐える力を指します。

ねずみ鋳鉄は引張強度が低いですが、圧縮強度が高いです。

対して、ダクタイル鋳鉄は引張強度・圧縮強度とともに高い性質があります。

③延性

延性で比べると、大きな違いが見られます。

ねずみ鋳鉄は延性が低く、衝撃に対しても脆いのがデメリットです。

対してダクタイル鋳鉄は延性が高く、衝撃に対しても強いのがメリットです。

④耐摩耗性

耐摩耗性とは、摩擦に対する耐性のことを指します。

ねずみ鋳鉄はある程度耐摩耗性がありますが、ダクタイル鋳鉄はそれ以上の耐摩耗性があります。

⑤加工性

ねずみ鋳鉄は鋳造しやすく、複雑な形をしている部品も加工しやすいメリットがあります。

一方ダクタイル鋳鉄は、高くて伸びるといった特性により、切削加工がしにくいのがデメリットです。

⑥耐振動性

ねずみ鋳鉄は耐振動性に優れ、振動をよく吸収します。

ダクタイル鋳鉄も耐振動性に優れていますが、ねずみ鋳鉄よりは劣ります。

⑦コスト

ねずみ鋳鉄は、製造コストが低いのも特徴として挙げられます。

一方、ダクタイル鋳鉄も安価な部類ではありますが、近年の物価高の影響により製造コストが上昇しつつあります。

⑧主な用途

ねずみ鋳鉄は振動吸収性や加工性、圧縮強度を活かし、車のエンジン部品やマンホールの蓋などに使われます。

ダクタイル鋳鉄は高い引張強度や延性、耐摩耗性を活かし、車のクランクシャフトや上下水道管、フライパンなどに活用されます。

ねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄の大きな違いは黒鉛の形状!

この記事では、ねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄の違いを紹介しました。

ねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄は、同じ鋳鉄の1種です。

大きな違いは黒鉛の形状です。ねずみ鋳鉄は片状に対し、ダクタイル鋳鉄は球状になっています。

ねずみ鋳鉄はその名の通り灰色の見た目をしており、加工しやすいのが特徴です。耐摩耗性や耐腐食性、耐振動性といった性質を活かし、車のエンジン部品やマンホールの蓋などに使われます。

一方、ダクタイル鋳鉄はねずみ鋳鉄の弱点である強度や靭性を打ち消しています。強度や耐摩耗性、耐熱性に優れているため、上下水道管やガス管、鉄道の車輪といった強度が必要な場所で活用されます。

名前が似ているものの、項目別に見ていくとそれぞれ長所・短所が見えてきます。

種類ごとの性質を理解し、場所や用途に合ったほうを選びましょう。

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