鉄の急須でお茶を淹れると急須から鉄分が溶け出し、手軽に鉄分を補給できるので便利ですよね。
しかし、内部がホーロー加工されている鉄の急須を購入してしまうと鉄分の補給はできませんし、鉄分の補給が目的なので、急須に使用される鉄の品質などにも注意する必要があります。
また、鉄の急須で実際にどの程度、鉄分を補給できるのか知りたいところです。
この記事では、南部鉄器をはじめとした鉄の急須の基礎知識や鉄瓶との違い、鉄分補給を目的として鉄の急須を選ぶ際の注意点、鉄の急須でどの程度、鉄分が補給できるのか、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。
また、鉄の補給には「急須」以外にも「急須兼鉄瓶」、「鉄瓶」などの選択肢もあり、それぞれの違いについても解説します。
鉄の急須とは?
ご存じのように鉄の急須はお茶を淹れる道具です。
鉄製ですが、直火やIHでの加熱には適していない商品もあります。
また、鉄の急須内面のサビを防止する目的でホーロー加工が施されている場合があります。
ホーローで内面をコーティングするとサビに強くなる一方で、鉄が溶け出さなくなります。
そのため、鉄分の補給が目的の場合はホーロー加工が施されていないタイプの鉄の急須を選ぶ必要があります。
鉄の急須と言えば「南部鉄器」を連想される方もおおいでしょう。
南部鉄器は盛岡市と奥州市の特産品で、盛岡の鉄器は17世紀初め、南部藩主が作らせたことにちなんで名付けられました。
鉄の急須は「南部鉄器」の他に、中国など海外製の安価な商品も出回っています。
ホーロー加工がされていない鉄の急須のメリット・デメリット
ホーロー加工がされていない鉄の急須のメリット・デメリットは下記の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
鉄分が補給できる 耐久性に優れ長持ちする 質実剛健でレトロ~モダンなデザインまでインテリアとしてもGood! 水やお茶がまろやかな風味になる 中国など海外製の商品は安価 | 錆やすい 重い 陶器製の急須よりメンテナンスの手間がかかる お茶のタンニンと鉄が反応して見た目が黒っぽく濁ることがある 「南部鉄器」は高価 |
鉄の急須は重く錆びやすいのが欠点です。(重量が気になる場合は、湯を沸かす際にお持ちの鍋に「鉄たまご」を一緒に入れて加熱し鉄分を摂取する方法もあります。)
ホーローで内面をコーティングされていないタイプの鉄の急須では、鉄分が溶け出す点が最大のメリットです。
また、陶器製の急須に比べて耐久性に優れ、100年近くもつと言われています。
長く使えるものなので、少々高くても安全性や品質、デザイン性に優れた日本製の「南部鉄器」を購入したいものです。
従来の「南部鉄器」のような質実剛健でレトロ調のデザインから、モダンなデザインまで選べるので、インテリアとしても楽しめます。
また、鉄の急須を使うと水やお茶の風味がまろやかになる点も見逃せません。
お茶に含まれる成分のタンニンと鉄が反応して見た目が黒っぽく濁ることがありますが、人体には無害なので安心してください。
鉄の急須と鉄瓶との違い
急須と鉄瓶はデザイン的によく似ていますが、下記のように用途や容量などに違いがあります。
比較項目 | 急須 | 急須兼鉄瓶 | 鉄瓶 |
---|---|---|---|
直火やIHで加熱 | △(商品による) | 〇 | 〇 |
ホーロー加工 | △(商品による) | × | × |
鉄の溶出量 | 〇(ホーロー加工がない場合) | ◎ | ◎ |
容量 | 小~中 | 中~大 | 大 |
相対的な重さ | 軽め | 重め | 重い |
急須はホーロー加工されている場合が多いので、鉄分の補給を目的とする場合は「ホーロー加工なし」の商品を選びましょう。
急須は容量が小さめなので重さもそのぶんだけ軽くなり、基本的に直火やIHでの加熱には適していません。(加熱したい場合は直火やIHが可能か確認しましょう)
直火やIHで加熱したい場合は「急須兼鉄瓶」や「鉄瓶」が適しています。
夏の暑い時期に大量にお茶を作って冷やして飲むような場合は、容量が大きい「鉄瓶」などが適しています。
「急須兼鉄瓶」や「鉄瓶」で水から沸かしてお茶を作る場合は、加熱ができない「急須」より長い時間鉄が溶け出すので、より多く鉄分を摂取できるでしょう。
鉄の急須で手軽に鉄分を補給し貧血予防と改善しよう!
ホーロー加工されていない鉄の急須では手軽に鉄分を補給できるので、貧血の予防や改善が見込めます。
貧血は体内に貯蔵されている鉄が枯渇するまで自覚しにくいので、特に鉄分が不足しがちな女性は普段から意識的に鉄分を補給しておいた方が無難です。
鉄の急須から溶け出す鉄は2価の鉄で、比較的体に吸収されやすい点がメリットです。
鉄のサプリメントを継続して購入するとコストがかかり続けます。
しかし、高価な日本製「南部鉄器」は購入費用はかかりますが、継続して鉄分を補給できるので、長い目で見ればコスパの面でサプリメントより優れています。
また、下記のような疑問をもたれる方も多いと思うので、詳しく解説します。
「鉄の急須から実際にどのくらい鉄分を補給できるの?」
「鉄の過剰摂取は大丈夫?」
鉄の急須で実際にどのくらい鉄分を補給できるの?
実際に鉄の急須から溶け出る鉄の量で貧血の予防や改善ができるのか確認しておきたいですよね。
また、鉄の過剰摂取にならないのかもチェックしておきたいところです。
鉄の急須から溶け出す鉄分の量について書かれた文献などは存在しなかったので、材質が同じ鋳鉄製の鉄鍋から溶け出す鉄分の量を参考にして概算してみましょう。
鉄鍋でたまねぎ100gを水50mlで5分間加熱した時の鉄溶出量は0.08mgです。(参考:調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化)
鉄の急須で上記の4倍の水量(コップ1杯の水:200ml)の場合は、0.08mg×4倍=0.32mgが溶出すると仮定して話を進めます。(鉄の急須は加熱に適さないので加熱が必要であれば、「急須兼鉄瓶」、「鉄瓶」の購入を検討しましょう)
厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の内容と比較しながら詳しく解説します。
下表のように「日本人の食事摂取基準(2020年版)」内で、1日に摂取がすすめられる鉄分の推奨量や耐容上限量が策定されています。
対象 | 鉄分摂取の推奨量 (1日当あたり) | 平成 28 年国民健康・栄養調査における 日本人成人(18 歳以上)の鉄平均摂取量 (1日当あたり) | 耐容上限量 (1日当あたり) |
---|---|---|---|
成人女性(18歳以上) | 月経なし:6.0~6.5mg 月経あり:10.5~11.0mg | 7.3±2.7mg | 40mg |
成人男性(18歳以上) | 7.0~7.5mg | 8.1±2.9mg | 50mg |
上表から、月経がある成人女性の場合では、1日に10.5mg~11.0mgの鉄分の摂取が推奨されているのに対して、実際は7.3mg程度しか摂取されておらず不足気味です。
たとえば、鉄の急須でコップ1杯分の水(200ml)を淹れると、月経がある成人女性について1日あたりの鉄分推奨量の約3%補給できます。
また、鉄の急須から溶け出す鉄分の量は、1日の耐容上限量をはるかに下回っているので問題はありません。
1日に飲料水から摂取する必要のある水分は1.2リットルです。(参考:「健康のため水を飲もう」推進運動)
1.2リットルの水分を鉄の急須から水分補給すると、月経がある成人女性について1日あたりの鉄分推奨量の約17%~18%を補給できます。
鉄の急須からの鉄分だけで1日あたりの鉄分推奨量を十分に補うことは困難なので、鉄分を豊富に含む食材や、鉄分含有のサプリメント、鉄のフライパンや鍋、鉄たまごなども合わせて貧血予防や改善をおこないます。
貧血が酷い場合は速やかに医療機関を受診してください。また、鉄と相性の悪い薬もあるので貧血など病気の診断を受けた方は、鉄の急須で鉄分補給をしてよいか相談しましょう。
まとめ
鉄分の補給を目的として鉄の急須を購入する際には、内側がホーロー加工されていないことを確認します。
アマゾンなどのECサイトによっては、ホーロー加工されていてもホーロー加工がないような説明がされていることもあるので、レビューなども参考にしてから購入しましょう。
日本製の「南部鉄器」は中国などの海外製より高額ですが、安全性や品質、デザイン面で優れているのでおすすめです。
鉄の急須のみで1日に必要な鉄分の推奨量を十分に満たせないので、ほかに鉄分の多い食材やサプリメント、鉄のフライパンや鍋、鉄たまごなども必要に応じて取り入れながら鉄分不足を補い、貧血の予防や改善を行いましょう。
貧血が酷い場合は速やかに医療機関を受診してください。