アルミニウム(アルミ)という金属から作られた「アルミフライパン」。
価格が手頃で入手しやすく熱伝導率がいいので、フライパンでも人気の材質です。
一方で、「アルミは体に悪そう」「安全性が気になる」といった声も少なくありません。
そこで今回は、アルミフライパンのメリット・デメリット、なぜ体に悪いと言われているのか解説します。
アルミフライパンが気になるけど使うのに不安がある、という人は購入前の参考にしてみてくださいね。
そもそもアルミフライパンとは?
まずは、アルミフライパンはどういったものか説明します。
アルミフライパンとは、アルミ素材からつくられたフライパンのことで、イタリアンレストランでは定番の調理器具です。
銀色に輝くフライパンを使って、パスタを作るところを見たことがある人も多いのではないでしょうか?
フライパンの種類にはアルミのほかにも、以下のようなものがあります。
- 鉄
- 銅
- ステンレス
- チタン
ここでは、近年人気を集めている鉄フライパンと、アルミフライパンの違いについて見ていきましょう。
鉄フライパンとの違い3つ
鉄フライパンとアルミフライパンは、大きく分けて3つの違いがあります。
①重さの違い
まず一番異なるのは、材質による重さの違いです。
鉄は比重が7.87gに対しアルミニウムは2.70gと、鉄の約3分の一になります。(参考:JISF 一般社団法人日本鉄鋼連盟)
鉄フライパンは26cmで1.5kgする製品もあり、ずっしりと重く、力のある人や慣れた人でないとうまく煽れません。
一方、アルミフライパンは軽いのが魅力的!
力に自信のない女性でも煽りやすいので、煽りやすさで言うとアルミフライパンのほうが優れているでしょう。
②熱伝導率の違い
熱伝導率(W/mk)で比べると、鉄よりアルミニウムのほうが高い数値を持ちます。
鉄は熱伝導率が72~80.4、アルミニウムは226~237と、アルミニウムのほうが上回っています。(参考:金属の熱伝導率一覧|分散型熱物性データベース|産総研)
ステンレスは16.3~26.4と数値が低く、温まりにくい材質です。(参考:各種金属の比較 | ステンレスホッパー.com)
熱伝導率が高いほど料理の開始時間が短縮されたり、微細な火力調整にも素早く反応できたりする利点があります。
アルミのほうが鉄より熱伝導率が高いですが大きな差ではないので、ほかの観点から見て比べるといいでしょう。
③耐久性の違い
アルミフライパンは鉄フライパンより、耐久性に欠ける材質です。
表面にコーティング加工されているものは、汚れや焦げ付きが少なくお手入れが簡単になりますが、耐久年数が1~3年と短くなります。
一方、鉄フライパンは正しくお手入れすると一生もの、と言われているほど長く使えるものです。
鉄フライパンの洗い方は、以下の記事で詳しく紹介しています。
じっくり育てて使いたいか、あるいは定期的に買い替えて手軽に使いたいかで決めるといいでしょう。
アルミフライパンのメリットとデメリット
それでは、アルミフライパンのメリット・デメリットと、アルミフライパンが体に悪いとされる理由も解説していきます。
アルミフライパンのメリット3つ
まずは、アルミフライパンのメリット3つを見ていきましょう。
メリット①:軽くて煽りやすい
アルミフライパンの最大のメリットは、軽いという点です。
直径26cmの場合、鉄フライパンは1kg以上する場合がほとんどですが、アルミフライパンなら約850gと軽量モデルも多く販売されています。
力に自信のない女性や年配の方でも、ラクに扱えるのは大きなメリットです。
メリット②:熱伝導率が高く素早く調理できる
アルミフライパンのメリットは、熱伝導率が高い点も挙げられます。
先ほど紹介したように、アルミニウムの熱伝導率は約226~237と、鉄やステンレスに比べて高い数値を誇ります。
熱伝導率が高いということは、調理開始までの時間が短くなったり、ソースの水分調整がしやすくなったりするのが利点です。
さらに、細かな火加減にも迅速に対応するため、料理慣れしている人にとっては扱いやすいと感じるでしょう。
水分の多いパスタ調理や、ある程度料理慣れしている人には、便利なアイテムです。
メリット③:調理中の様子がわかりやすい
アルミフライパンは内側も明るい銀色で出来ているため、調理中の様子がよくわかるのもメリット。
火の通り具合やソースの状態が目で判断しやすく、焦げ防止にもつながります。
銀色一色のボディはおしゃれに見えるだけでなく、調理中にも役立つうれしい面もあります。
アルミフライパンのデメリット4つ
アルミフライパンのメリットを3つ紹介しましたが、デメリットもいくつかあります。
デメリット①:酸やアルカリ性に弱く変色する
アルミフライパンは、酸やアルカリ性に弱く変色しやすい性質があります。
お酢を使うとアルミと反応してフライパンが傷んでしまうので、お酢を使った料理はアルミ以外の調理器具を使いましょう。
デメリット②:取っ手が熱くなる
取っ手の付いていない一体型のアルミフライパンは、熱がダイレクトに伝わるので素手で持つのは困難になります。
布巾や鍋つかみを使うことになりますが、「そのまま手で掴めないのは面倒」と感じる人にとっては不便な点でしょう。
デメリット③:基本的にIHで使えない
アルミニウムは磁石にくっつかない金属のため、IH対応していない製品がほとんどです。
なかには極厚アルミと高効率ステンレスの合金によりIHで使えるモデルもありますが、選べる幅は少なくなります。
購入前にはIHに対応しているか確認し、「買ったのに使えなかった」という事態を防ぎましょう。
デメリット④:高温・長時間の調理が苦手
アルミフライパンは、高温状態が続くと変形してしまいます。
熱伝導率が高く素早い調理を得意としていますが、揚げ物やじっくり火を通す調理には不向きです。
サッと熱を加えたいパスタや炒め物などに適しているため、ステーキをじっくり焼いたり長時間煮込んだりする場合は、別のフライパンや鍋を使うのがおすすめです。
アルミフライパンが体に悪いと言われる理由
「アルミニウムが体内に入ると体に悪影響を及ぼす」という噂を見たり、聞いたりしたことがある人も多いと思います。
結論からいうと、アルミフライパンが体に悪いとされる科学的な根拠はありません
1972年、透析治療中の患者の脳にアルミニウムが残り認知症の症状が表れましたが、この症例はアルミニウムが過剰に体内に取り込まれたことが原因でした。
アルミニウムは普段から日常的に食品や食品添加物から摂取しているもので、WHO(世界保健機構)によるとアルミニウムの摂取量は1日あたり2.5~13mgと報告されています。
加熱調理器具をすべてアルミ製にしたとしても、摂取するのは4~6㎎程度と考えられています。
さらに、体のなかには35~40mgのアルミニウムが安定した状態で存在しているとされ、そのうち腸管を得て99%の大部分は排出されるものです。
過去にアルミニウムがアルツハイマー病の原因とされましたが、アルミニウムだけでなくほかの成分に関しても、大量に体内に取り込むことは毒性になります。
まとめると、アルミフライパンを使ってアルツハイマー病を引き起こす可能性はほぼありません
ただ、微量のアルミニウムでも溶け出すのが怖いと感じる人は、アルミフライパン以外を検討するのがいいでしょう。
参考:よくわかる「アルミニウムと健康」基礎知識|「アルミニウムと健康」連絡協議会、アルミニウムに関する情報|厚生労働省
まとめ
この記事では、アルミフライパンのメリット・デメリット、体への影響について解説しました。
アルミフライパンは鉄フライパンと違い、軽くて煽りやすいのが魅力の調理器具です。
熱伝導率が高いため、パスタとソースを絡めるときや微細な火加減を要するオムレツなど、素早い調理を得意としています。
デメリットは取っ手が熱くなる、基本的にIHで使えない、高温・長時間の調理が苦手なことが挙げられます。
「アルミフライパンは体に悪いのか」に関しては、ほぼ悪影響を及ぼさないと考えていいでしょう。
体内に入ったアルミニウムは約99%そのまま排出されるため、アルミフライパンを使って調理するぶんには問題ありません。
それでも気になる方は、鉄やステンレスなど、別材質のフライパンを使いましょう。
デメリットもありますが、やはり軽さが魅力のアルミフライパン。
コーティング加工されているお手入れ簡単な製品もあるので、IH対応や取っ手部分を確認して使いやすい製品を選んでみてくださいね。